



地獄変
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4.1 • 468件の評価
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発行者による作品情報
1918年(大正7)に『大阪毎日新聞』『東京日日新聞』に連載され、翌年に短編集「傀儡師」(新潮社)に収録された。物語の舞台は平安時代。時の権力者である堀川の大殿から地獄図を描くように命じられた絵師、良秀の「芸術のためなら実の娘の命すら犠牲にする」という狂気の世界が展開される。舞い狂う火の粉と黒煙の中で、悶え苦しむ娘の姿をじっと見つめる絵師の芸術至上主義は、芥川自身の芸術に対する心構えの投影とも評されている。2007(平成19)年に岡山県倉敷市で、未完に終わった「邪宗門」の直筆原稿22枚とともに、「地獄変」の直筆原稿のうち2枚が見つかっている。「地獄変」は作品の書き出し部分で、原稿用紙の冒頭に題名と芥川の名前が書かれている。
APPLE BOOKSのレビュー
鎌倉時代の説話集『宇治拾遺物語』に収められた「絵仏師良秀家の焼くるを見て悦ぶ事」をモチーフに、芥川龍之介が創作した短編小説。平安時代、堀川の大殿様に仕える人物が地獄変相図のびょうぶの由来について語る。絵師の良秀(よしひで)はその腕こそ一流だが、傲慢(ごうまん)で、誰からも嫌われていた。そんな彼も大殿様に仕える15歳の一人娘のことだけは溺愛している。ある時、良秀は大殿様から地獄変のびょうぶ絵を描くよう仰せつかった。弟子を鎖で縛りあげたりミミズクに襲わせたり、何かに取りつかれたように没頭するものの、燃え上がる牛車(ぎっしゃ)で苦しむ女性の姿だけがどうしても描けない。見たものしか描けないという良秀が実際に牛車を燃やしてほしいと頼むと、大殿様は快諾。しかし、火を放たれた牛車の中には…。芸術のためにはどんな犠牲もいとわない天才絵師の異常なまでの執念を描く。その姿は芥川自身の芸術至上主義になぞらえることができるだろう。芸術家は美を追求するために人間性を捨て去ることはできるのか。究極の倫理観を問いかける、芥川中期の代表作。
カスタマーレビュー
芥川は
初めて読みました。
文章が美しく、衝撃な内容に驚きました。
芥川がこれほど凄いとは知りませんでした。ひとが言う文豪とはこれです。
なんという恐ろしくも悲しくも不思議な物語だろうか。
まさにこの絵師と取り巻く人々こそが地獄変であろう。恐ろしい物語の流れの終末が不思議と落ち着きをもたらすのは何故だろうか。
縊死やな